
ある「街の不動産屋さん」のアトツギの葛藤
周りの友達とは共有しづらいアトツギの悩み。
時間が解決してくれる問題でもなかったりするよね。
今回は、家業のアトツギでもある新卒銀行員に、
同じく家業を持ち進路に悩むツグムくんが迫ります
– PEOPLE –
聞き手

ツグムくん
家業を継ぐかもしれない、大学3年生。
将来やりたいことも特にないれけど、「継ぐ」にもなんだか乗り気になれない。
親から将来の話を振られると、口をつぐみたくなる、ツグムくん。
(好きな食べ物:つくね)
話し手

あゆむくん
23歳の新卒銀行員。
実家は福島市で不動産業を営んでいる。
一人っ子であり、親からは後継者としての期待を寄せられているが・・・
(好きな食べ物:生ハム)
01
– 実家は街の不動産屋さん –
ズバリ、次期社長という認識でOKですか?
う〜ん。そこがまだ決断できていないんですよね。
なるほど。まさに「ツグカモ」な人ですね!
僕も同じように家業を継ぐか悩んでいるので、その辺りの気持ちを共有できると嬉しいです。
もう少し家業について教えてくれますか?
不動産の賃貸・仲介業を福島市で営んでいて、自社物件の取り扱いもしています。途中で業種は変わっていますが、父が4代目で、従業員は5名程度です。
昔からある街の不動産屋さんという感じですね。日本企業はほとんどが中小企業だから、あゆむくんと同じ悩みを抱える人は多そう!
02
–いつも側にあった家業の存在 –
子供の頃は実家が不動産屋さんであるということをどう思っていましたか?
うちは、家と会社がくっついているんです。なので、子供の頃から家業はとても身近でした。父と一緒に物件を見にいったり、会社の親睦会について行ったりもしていたので、小学生くらいの頃はなんとなく将来は自分が継ぐのかなーくらいに思っていました。
家業を継ぐことに対して前向きだったんですね。
そうですね。物件情報サイトを見て家賃相場を見たり、そんな遊びをしていたぐらいですから、不動産自体が好きだったんですかね。
ただ、当時はお笑い芸人になりたいなーと思ったり、その時々でやってみたいことは他にもあったので、「必ず継ぐんだ!」というよりは、「継ぐんだろうなー」くらいの感じです。
おぉ。不動産の申し子のようなエピソードが出ましたね。笑
お父さんとは将来についての具体的な話はしていたんですか?
小・中学生の頃に父とアトツギのことは話していないですね。どちらかというと会社の関係者の人たちの会話から感じたり、実際に物件見学なんかをする中で、自覚していたという感じです。
03
– 回り道をして探そうとした自分の未来 –
最初に、家業を継ぐことを決断できていないと教えてくれましたが、その葛藤はいつからあるのでしょうか。
高校受験の時に初めて自分の未来を「選ぶ」という経験をしました。
その時にもっと先のことについても考えたんです。
家業を継ぐ以外にも選択肢はあるんじゃないかって。
このままいくと、どんなにいい大学に入っても、どんな企業に入ってもその先に家業を継ぐというゴールがあることは一緒。それでほんといいのかと、悩みはじめました。
他に「これがしたい!」というのはあったんですか?
具体的なものはなかったです。漠然と人生が家業に縛られていることにモヤモヤしていて、自分自身の道を模索したいと思っていました。
あとは、会社にとっても、もっと熱意のある人に継いでもらった方がいいんじゃないかと思ったり。
決められたレールの上を歩きたくない!という感じですね。
大学は東京に進学されていますが、どのように決められたんですか?
福島での高校生活が退屈に感じていたので、東京で刺激が多そうな大学に行きたいと思いました。そういう環境に身をおけば自分の価値を高められるような気がして。
その時に父からは、福島に帰ってくる前提で大学には進学してほしいという話がありましたが、30歳くらいまでは社会勉強で好きにしていいよという感じでした。そのため、半分僕のわがままではありましたが、東京で進学することを認めてくれました。
30歳という具体的な数字が出てきましたね。
はい。でも僕の内心としては、家業とは違う世界で成果を出している姿を見せられれば、親が他の人に継がせる選択肢も考え始めるんじゃないかという期待もありました。
継ぐことが嫌という訳ではないけれど、他の道もあるのでは?という葛藤があったんですね。それは僕も一緒だなー。
04
–見えない未来へのワクワクを求めて –
大学に入ってから、家業に対しての気持ちの変化や意識的にやっていたことはありますか?
家業を継ぐ以外の将来を模索しつつ、仮に継ぐとなった時のことも考えていました。大学在学中に不動産関連の資格はとろうと思い、1年の時に宅建を取得して、最近ではFPの資格も取得しました。3年から始まるゼミで地域研究ができるところを選んだのも、家業の影響があったかもしれません。
色々と考えて努力されてきたんですね!就活でのキャリア選択も、家業を意識されたのでしょうか。
最初は不動産業界をみていました。将来継ぐ継がないを抜きにしても他の業界に対する知識がなかったというのもあったと思います。
実際にみてどうでしたか?
説明会に行くと、会社に入ってから、どんな仕事をするのかが想像できたんですね。
そのことが、見えている未来に進んでいる感じがして、モヤモヤしていました。
大変だったとしても、イメージしきれないところで頑張る方が、自分のモチベーションになるのではないかと。
そう思うようになってからは、他の業界も見始めましたね。
あゆむさんは小さい頃から不動産に触れてきたからこそ、敢えてイメージが湧かない「ワクワクする世界」に挑戦しようとしたんですね。
そうですね。最終的には銀行を選びました。企業の経営や財務の知識を吸収しながら幅広い経験ができそうで、ワクワク感を得られたのが決め手でした。就職活動が進んで相性が分かってくる中で、その銀行の行員さんと会った時に、信念や人柄に共感して、「こんな社会人になってみたい!」と思えたのも決めた理由ですね。
就活に関して、お父さんと話すことはありましたか?
就活に関しては何も言われなかったですね。進捗は伝えてましたが、それに対して、ああしろこうしろとかは言われなかったです。最終的に銀行を選んだときも反対はなく、受け入れてくれました。
05
– 家業を継ぐ≠地元に帰る –
将来的に地元に戻り、家業を継ぐことについて今はどう考えていますか?
就活が終わったときに、改めて自己分析をしたんです。家業を継ぐこと自体については前向きですが、地元に戻るのはどうしようかなと思っているところです。地元に戻らず家業を継ぐ方法も模索しています。
今は必ずしもその場所にいないと仕事ができないわけではないですし、色んな継ぎ方がありそうですね。
やっぱり首都圏での暮らしは便利で憧れます。そして将来のライフプランを考えた時に、家庭を持って子育てをするなら、子供の可能性を地元よりも首都圏の方が広げられるのではないかと悩んでもいます。
そこはその時のライフプランにもよって柔軟に考えていこうと思いますが、30歳くらいまでには方向性を出そうかなと。
どちらにせよ、何らかの形で家業とは関わりをもつ事は決めています。自分なりの形、折衷案を模索している状況ですね。
まだ目安とする30歳まで時間はありますし、いい形が見つかると良いですね。
これからも考えていくつもりです。今まで家業がある人が身近にいなかったので周りには相談してきませんでしたが、もし自分と似た境遇の人がいれば話を聞いて参考にしたいです。
アトツギについて悩むリアルな心境が聞けてとても参考になりました。ありがとうございました!
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